SIXPADなどのEMSを見て、こんな疑問を持ったことはありませんか?
私は鍼灸師として臨床に携わりながら、長年、運動指導も行ってきました。
そして、正直に言うと、以前の私はEMSにかなり懐疑的でした。
「筋肉は自分で動かして鍛えるもの」
そう考えていたからです。
今でも、この考えは基本的には変わっていません。
それでも現在、当院ではSIXPAD MEDICAL PROを導入しています。
なぜでしょうか?
この記事では、EMSを過大評価することも、最初から否定することもせず、
「EMSは結局、何ができて、何ができないのか?」
を、研究も参考にしながら正直に解説します。
この記事の結論
まず、長い記事を読むのが面倒な方は、ここだけ読んでください。
EMSについて私が考えていること
- EMSは電気刺激によって筋肉を収縮させることができる
- EMSによって筋力向上につながる可能性がある
- ただし、EMSが通常の筋トレより優れているとは言えない
- EMSだけで運動のすべてを代替することはできない
- 心肺機能、バランス、持久力、動作能力などは別に考える必要がある
- EMSは運動やリハビリテーションを補助する手段として使われてきた
- 「運動した方がいいけれど、なかなか始められない」という人にとって、きっかけになる可能性がある
そして、私がEMSを導入した理由は、
「運動が一番良い」ことと「その人が実際に運動できる」ことは別だからです。
100点の方法を知っているのに0点になるより、1点でも始められる方法を選ぶ。
私は、これも健康づくりの一つの考え方だと思っています。
1.そもそもEMSとは?
EMSは、Electrical Muscle Stimulationの略です。
電気刺激によって運動神経を刺激し、筋肉を収縮させます。
自分の意思で筋肉を動かす通常の運動とは、筋肉を収縮させる方法が異なります。
医療・リハビリテーションの分野では、NMES(神経筋電気刺激)などの名称で研究されてきました。
つまりEMSは、
最近突然登場した「楽をするためだけの健康グッズ」ではありません。
一方で、
「EMSを使えば運動しなくても大丈夫」
という話になると、これは別問題です。
EMSで筋肉を刺激できることと、身体を運動させることは同じではありません。
ここを分けて考えることが大切です。
2.EMSで本当に筋肉は鍛えられる?
結論から言えば、
EMSによって筋力向上が起こる可能性はあります。
ただし、
「EMSなら普通の筋トレより優れている」
とは言えません。
健康な人を対象に、NMESによるトレーニングと通常の筋力トレーニングを比較したシステマティックレビュー・メタ解析では、筋力向上について明確な優劣は確認されませんでした。[1]
つまり、
EMSにも筋力向上の可能性はある。
でも、
「EMSだから筋トレよりすごい」ということではない。
これが、現在の研究から考える現実的な捉え方だと思います。
🔎 研究ではどうだった?詳しく知りたい方はこちら
2022年のシステマティックレビュー・メタ解析では、健康な人を対象とした研究を分析し、NMESによるトレーニングと通常の筋力トレーニングを比較しています。
その結果、筋力向上について、どちらか一方が明確に優れているという結果は確認されませんでした。[1]
つまり、
「EMSでも筋力向上は期待できる可能性がある」
一方で、
「EMSの方が通常の筋トレより優れている」
とは言えないということです。
3.EMSにはどんなメリットがある?
EMSの特徴を考えると、私は大きく2つのメリットがあると思っています。
3-1.自分では動かしにくい筋肉にも刺激を入れられる
運動では、自分で筋肉を収縮させる必要があります。
ところが、
「この筋肉を使ってください」
と言われても、うまく力を入れられない方はいます。
EMSでは電気刺激によって筋肉を収縮させるため、自分の意思だけでは難しい筋肉への刺激を補助することができます。
実際、膝関節の手術後などを対象とした研究でも、リハビリテーションにNMESを加えることで、筋力回復を補助できる可能性が報告されています。[2]
3-2.運動を始めるハードルを下げられる
そして、私がEMSを導入する大きな理由がこちらです。
「スクワットを10回やりましょう」
と言われると、
「面倒だな」
「きつそう」
「自分にはできない」
と思う人もいます。
でも、
「まず15分、EMSを体験してみませんか?」
なら、やってみようと思える人がいます。
実際、私自身の店舗でも、
無料のパーソナルトレーニングには興味を示さなかった方が、無料のEMS体験には興味を持つ
という違いを感じることがあります。
これはEMSの効果とは別の話です。
でも、健康づくりでは非常に重要なことだと思っています。
4.EMSにはデメリットもある
ここは、EMSを考えるうえで非常に重要です。
私はEMSを導入していますが、
「EMSなら何でも解決できる」
とは思っていません。
4-1.EMSは運動の代わりにはならない
通常の運動によって得られるものは、筋力だけではありません。
例えば、
- 心肺機能
- 持久力
- バランス能力
- 動作能力
- 骨への刺激
- 身体を協調して動かす能力
- 実際の生活動作への適応
などがあります。
EMSだけですべてを代替できるとは考えていません。
だから私は、
運動できる人には、今後も運動をおすすめします。
4-2.「EMSだけで筋肉がつく」と期待しすぎない
EMSによる筋力向上を示す研究はあります。
しかし、研究によって対象者、刺激条件、部位、期間などが異なります。
また、EMSと通常の筋力トレーニングを比較した研究では、通常のトレーニングに対する明確な優位性が確認されない結果もあります。[1]
つまり、
「EMSを使えば簡単にムキムキになる」
という単純な話ではありません。
4-3.一回やっただけで身体が変わるわけではない
これも筋トレと同じです。
身体を変えていくには、継続的な刺激が必要です。
EMSも、
「一回受ければ終わり」
というものではありません。
4-4.痩せるための魔法の機械ではない
「EMSをつければ脂肪がどんどん燃える」
というイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、EMSを
「つけているだけで痩せる方法」
と考えるのはおすすめしません。
体重や体脂肪を変えるには、
- 食事
- 身体活動
- 睡眠
- 日常生活
など、生活全体を見る必要があります。
5.では、運動とEMSはどちらがいい?
私は、
「どちらか」ではなく「必要に応じて組み合わせる」
と考えています。
普通に運動できる人
→ 基本は運動。
運動を始めたいけれど、何から始めればいいか分からない人
→ EMSをきっかけに身体への意識を高め、少しずつ運動へ。
痛みや筋力低下によって運動が難しい人
→ EMSを運動・リハビリテーションの補助として検討。
すでに筋トレをしている人
→ 通常のトレーニングとは異なる刺激として活用する可能性を検討。
つまり、
「EMS vs 運動」
ではなく、
「EMSも運動も、身体を変えるための手段」
と考えています。
🔎 EMS+運動について、研究ではどうなの?
EMSと自発的な筋収縮を組み合わせたトレーニングについては、筋力向上につながる可能性を示した研究があります。
一方で、刺激方法や運動内容などの条件にはばらつきがあります。
そのため、
「EMS+運動なら必ず通常の運動より優れている」
とまでは言えません。[4]
また、膝関節症を対象とした2026年のシステマティックレビューでは、NMESを運動療法に加えることで、痛みやTimed Up and Go(TUG)などに小さな改善がみられる可能性が示されました。
一方で、四頭筋筋力やWOMAC全体では運動療法単独との差は確認されず、エビデンスの確実性も非常に低いと評価されています。[3]
研究を見ても、
「EMSを追加すれば何でも改善する」
という結果ではありません。
だからこそ、
誰に、何のために、どのように使うのか
を考える必要があります。
6.それでも、なぜBridgeはEMSを導入したのか?
ここが、この記事で一番伝えたいところです。
私は以前、
「EMSと運動ならどちらがいいですか?」
と聞かれたら、
「運動です」
と答えていました。
今でも基本的には同じです。
それでもSIXPAD MEDICAL PROを導入したのは、
「運動が一番」という理想だけでは、身体を変えられない人がいる
と臨床で感じてきたからです。
健康のために運動した方がいい。
これは、多くの人が知っています。
でも、
仕事が忙しい。
子育てがある。
疲れている。
痛みがある。
体力がない。
何をすればいいか分からない。
理由はいろいろあります。
「正しいことを知っている」ことと「実際に行動できる」ことは違います。
だから私は、
100点の方法を実行できずに0点になるより、
1点でも始められる方法を選ぶ。
という考え方も大切だと思っています。
もちろん、最終的には運動できる身体を目指したい。
でも、その最初の一歩としてEMSを使う。
それも一つの方法だと思っています。
7.EMSは「ゴール」ではなく「Bridge」
当院の名前はBridgeです。
橋は、目的地ではありません。
向こう側へ渡るためのものです。
EMSも同じだと考えています。
EMSを受け続けることが目的ではありません。
その先に、
- 自分の身体を自分で動かせる
- 筋力を維持できる
- 運動習慣をつくれる
- 元気に歩ける
- 好きなことを続けられる
という目的があります。
だからBridgeでは、
鍼灸
↓
EMS
↓
運動
↓
自分で身体を管理できる状態
という流れも大切にしていきたいと考えています。
EMSも鍼灸も運動も、
全部、手段です。
その先にあるのは、
元気に動ける身体。
そして、
これからも自分の好きなことを続けられる身体。
それが、Bridgeの考えるEMSです。
まとめ|EMSは「楽をするため」だけのものではない
最後に、もう一度まとめます。
EMSで期待できること
- 電気刺激によって筋肉を収縮させる
- 筋力向上を補助する可能性がある
- 運動やリハビリテーションを補助する
- 運動を始めるきっかけになる
EMSだけではできないこと
- 通常の運動をすべて代替する
- 心肺機能を十分に鍛える
- バランス能力や動作能力をすべて改善する
- EMSだけで簡単に痩せる
だからこそ、私はEMSを過大評価もしません。
かといって、最初から否定もしません。
大切なのは、
「その人にとって、今必要な手段なのか?」
ということだと思っています。
EMSを使うことが目的ではありません。
運動することだけが目的でもありません。
鍼灸も、EMSも、運動も、
全部、手段です。
その先にある、
「元気に動ける身体」
をつくるために。
それが、鍼灸 Conditioning Room Bridgeの考えるEMSです。
EMSを導入する際に書いたブログも合わせてお読みいただけたら幸いです↓
正直、EMSには懐疑的でした。それでも鍼灸院に導入する理由|SIXPAD MEDICAL PRO
参考文献
📚 参考文献を確認する
[1]
Happ KA, Behringer M.
Neuromuscular Electrical Stimulation Training vs. Conventional Strength Training: A Systematic Review and Meta-Analysis of the Effect on Strength Development.
J Strength Cond Res. 2022;36(12):3527-3540.
PMID: 34417404.
[2]
Labanca L, Bonsanto F, Raffa D, Orlandi Magli A, Benedetti MG.
Does adding neuromuscular electrical stimulation to rehabilitation following total knee arthroplasty lead to a better quadriceps muscle strength recovery? A systematic review.
Int J Rehabil Res. 2022;45(2):118-125.
PMID: 35256573.
[3]
Costa da Silva A, et al.
Effect of neuromuscular electrical stimulation associated with therapeutic exercise on pain, function, and strength of people with knee osteoarthritis: a systematic review with meta-analysis of randomized clinical trials with GRADE recommendations.
Disabil Rehabil. 2026.
PMID: 41742784.
[4]
Borzuola R, Laudani L, Labanca L, Macaluso A.
Superimposing neuromuscular electrical stimulation onto voluntary contractions to improve muscle strength and mass: A systematic review.
Eur J Sport Sci. 2023;23(8):1547-1559.
PMID: 35856620.


